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労災弁護士コラム

使用者に対する損害賠償請求における労災保険給付の扱い~損益相殺~

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労災事故がにあって、労災保険給付金が支払われた場合、その後に使用者に対して損害賠償請求をする際には、支払われた労災保険給付分は、すでに損害が補償されているとして損害賠償額から控除されます。このように、被害者が、労災事故によりなんらかの経済的利益を得た場合に、その利益分が損害賠償額から控除されることを損益相殺といいます

労災保険給付のうち、既払いの労災保険金は損益相殺の対象となりますが、障害補償給付における将来支給予定の年金については、判例上、損益相殺として控除できないこととなっています。

労災保険法上は、障害補償年金と遺族補償年金について、その前払一時金の最高限度額(死亡の場合は給付基礎日額の1000日分)までは、損害賠償請求訴訟において抗弁として支払わないことができるとされています(労災保険法64条1項)。つまり、使用者側としては、この最高限度額に年金の支給額が達するまで支払いを拒絶することができ、支払拒絶ができなくなる時点では、既に支払われている年金額(=前払一時金の最高限度額)を損益相殺として控除することができることになります。前払一時金の最高限度額は、各障害等級によって異なりますので、注意してください。

特別支給金(休業特別給付金、障害特別給付金、遺族特別補償給付金等)は労災保険給付に上乗せで国から支給されるものですが、判例は、損益相殺の対象とならないとしています。これは、支給の目的が、損害填補のためでなく、被災者や遺族の福祉のためであるからとされています。

労災保険給付以外では、使用者が労災上積補償を独自に(あるいは民間の保険に加入するなどして)行っている場合には、損益相殺の対象となります(香典は対象とならないのが原則です。)。また、厚生年金から、障害厚生年金や遺族厚生年金を受給している場合も損益相殺の対象となります。

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