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労災弁護士コラム

労災(労働災害)を会社に対して損害賠償請求できる期限について

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1 はじめに


労災(労働災害)に被災された場合、労災事故の原因に会社の落ち度があるようなときは、被災労働者は、会社に対し、損害賠償請求を行うことが可能です。

しかし、労災に遭ったとはいえ、いきなり会社に損害賠償請求を行うことは気が引けると思います。

労災に被災した場合、労災保険を利用して治療を行い、怪我が治ったら(症状固定)、職場復帰し、会社に対する損害賠償請求は我慢するという選択をされる方も多いと思います。

しかし、職場復帰しても、後遺症の状態がひどく仕事が続けられないなどの理由で後になって、やっぱり、損害賠償請求したいと考え直すこともあると思います。

以下では、労働災害に被災し、会社に損害賠償を行う場合の時効期限について説明します。

 

2 労災損害賠償請求の期限について

(1) 不法行為として請求する場合

会社に対し、労災の損害賠償請求を行う場合、不法行為責任として損害賠償請求を行うことができます。

この不法行為責任は、民法709条を法的根拠にする損害賠償請求であり、不法行為が発生した時から年5%の遅延損害金を請求することができることに特徴があります。

ただし、不法行為責任を追及することができるのは、原則として、労災事故が起こってから3年までとそれほど長期間の猶予はありません。

(2) 安全配慮義務違反として請求する場合

不法行為責任とは別に、安全配慮義務違反に基づいて、会社に対し、労災の損害賠償請求を行うこともできます。

安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求の場合、被害者が損害賠償請求した翌日から会社側に遅延損害金の支払い義務が生じることに特徴があります。

そして、安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求の場合は、原則として、事故が起こった時から10年間以内であれば、請求することが可能であるため、不法行為責任に比べて、長期間の猶予があると言えます。

(3) 不法行為と安全配慮義務違反との間の使い分けについて

労災の損害賠償請求は、上記で説明した「不法行為」か「安全配慮義務違反」のいずれかの法的根拠に基づいて行うことになりますが、両者に大きな違いはありません。不法行為責任を選んでも、安全配慮義務違反を選んだとしても、請求を行う被災労働者側に立証責任があり、その証明の難易度は同じと考えて差し支えありません。

そして、不法行為責任は労災事故日からの遅延損害金を会社に請求できる点で労働者に有利といえますが、その分、時効期間が事故日から3年であるため消滅時効にかかりやすいという難点があります。

そのため、基本的には不法行為責任に基づいて労災の損害賠償請求を行いますが、労災事故日から3年間を経過するような古い労災事故の損害賠償請求の場合には安全配慮義務違反に基づいて請求することになります。

 

3 時効期間の計算方法


以下では、労災の損害賠償請求について、時効の具体的な計算方法を説明します。

(1) 労災事故の場合

一般的な労災事故である工場機械に挟まれたり、高所作業中に転落したりするなどして生じる労災事故の時効は労働災害が発生した日を基準に計算します。

つまり、2015年10月25日に起こった労災事故の不法行為責任が時効を迎える日は、事故日から3年後の2018年10月25日で、安全配慮義務違反に基づく請求が時効を迎える日は、事故日から10年後の2025年10月25日となります。

なお、ここで気を付けなければならないのは、後遺症に関する損害賠償請求は事故日とは別に後遺症認定日から進行することです。すなわち、労災事故が起こって、1年程度手術やリハビリなどの治療を行い、治療が終わった時点(症状固定)で残っている痛みや可動域制限などは労災事故の後遺症となります。その労災事故の後遺症に関する慰謝料や逸失利益の損害賠償請求に関する時効の進行は、労災事故発生日ではなく、怪我が治癒した症状固定日となります。

そのため、労災事故発生日から期間を計算した場合には10年間を過ぎており、時効が成立している場合でも、後遺症の症状固定日から計算した場合には時効が成立していないこともあります。

(2) 過重労働等を理由にした精神疾患の場合

最近は、過重労働やパワハラを原因とした精神疾患の労災も多く認められています。このような精神疾患の労災の場合、時効が進行する起算日がいつとなるのかが不明確です。

一つの考え方としては、労働基準監督署が労災と認定した精神疾患の発症日を起算日と考えることが可能です。

この労働基準監督署が認定した精神疾患の発症日は、労働災害に関する調査復命書に記載されていますので、これを取り寄せて確認することができます。

 

4 損害賠償請求すべき時期について


以上で説明したように労災の損害賠償請求は、比較的長い期間に亘って請求することが可能です。

もっとも、労災の損害賠償請求をすべき時期はそれほど長期間の猶予はありません。

なぜなら、労災の損害賠償請求を行う場合、被災した労働者側は、労災が発生したことについての会社の責任を証明しなければなりません。その証明に最も有用な資料は、労働基準監督署が調査した報告書等の内部資料です。この内部資料は裁判などで開示を受けることが可能ですが、保存期間は5年間と言われております。したがって、労災事故発生から5年間を経過しているようなケースでは、労働基準監督署の内部資料がすでに破棄されており、労災の損害賠償請求を行うための十分な証拠が存在しないことがあり得ます。

また、当然ですが、時間が経てば経つほど事故に関する記憶は薄れ、目撃者などの証人を探すことも困難となります。

そのため、労災損害賠償請求の時効の問題とは別に、損害賠償請求をすべき適切な時期はいつか?と問われた場合には、症状固定後できるだけ早い時期に損害賠償請求を行うことが適切といえます。

 

5 最後に

以上でご説明したとおり、労災(労働災害)に遭ったことについて、会社に対し、損害賠償請求を行う場合には、不法行為責任の場合には3年間、安全配慮義務違反の場合には10年間と比較的長期間の猶予があります。

しかし、実際に損害賠償請求を行う場合、賠償金を獲得するための証拠を整える必要があり、そのためには、できるだけ早い段階で損害賠償請求を行うことが適切といえます。

もし、ご自身やご家族が労災(労働災害)に被災し、会社に対し、損害賠償請求を検討しているのであれば、その見込みを確認するためにも、弁護士等の専門家に相談されることをおススメします。

なお、当事務所は、労働災害に専門特化し、大阪・奈良・和歌山・京都・兵庫・滋賀等の近畿圏を中心に全国各地の事案を扱っており、経験も豊富です。

また、完全成功報酬制を採用しているため、経済的なご負担をかけることもありません。

相談は無料ですので、労災(労働災害)について、ご不安な点がある場合には、お気軽にお電話またはメールでご相談ください。微力ではありますが、お力になれると思います。

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