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労災弁護士コラム

精神疾患と労働災害

投稿日:2017年3月18日 更新日:

精神疾患と労働災害

労災として補償の対象となり得るのは,怪我をされた場合だけではありません。
仕事上の出来事を原因として精神疾患に罹患された場合にも,労災補償の対象となる場合があります。

実際に,厚生労働省が発表している過労死等の労災補償状況に関する統計によれば,平成27年度における精神障害の労災補償の請求件数は1515件と,前年度より増加の傾向にあります。電通における過労死が大きく取り上げられたこともあり,今後も増加傾向にあるといえるでしょう。

もっとも,請求件数が増加する一方で,平成27年度における精神障害の労災補償支給決定件数は472件であり,前年度と比べても減少しています。
この数字からも,業務上や通勤途中の怪我の場合と比べ,精神障害の労災認定を受けるのが難しいことがわかります。

精神障害の場合,仕事上の出来事が原因で精神障害に罹患されたのかという関係性(業務起因性と言ったりします。)が必ずしも明らかでない場合が多いのです。
日常生活では,職場だけでなく家族や友人など,様々な人間関係の中で生活しており,その中では,時にショッキングな出来事も起こりえます。あるいは,借金が返せずに悩むこともあります。
労基署は,当該精神障害が,真に仕事上の出来事を原因とするものか,という点を厳密に審査します。

厚生労働省が公表している精神障害の労災認定要件は次のとおりです。
①認定基準の対象となる精神障害を発病していること
②認定基準の対象となる精神障害の発病前概ね6か月の間に,業務による強い心理的負担が認められること
③業務以外の心理的負荷や個体側要因により発病したとは認められないこと

このうち,②の要件が特に重要となります。ここでいう「業務による強い心理的負担」とは様々なケースが想定されますが,一定の「特別な出来事」があれば,強い心理的負荷があったと評価されます。
「特別の出来事」としては,
・発病直前の1か月前に概ね160時間を超えるような,又はこれに満たない期間にこれと同程度(例えば3週間に概ね120時間以上の)時間外労働を行った。
・生死にかかわる,極度の苦痛を伴う,又は永久労働不能となる後遺障害を残す業務上の病気やケガをした。
・業務に関し,他人を死亡させ,又は生死にかかわる重大なケガを負わせた。
・強姦や,本人の医師を制圧して行われたわいせつ行為などのセクシャルハラスメントを受けた。
などです。

精神障害の労災認定を受けるには,これらの点をきちんと報告していく必要があります。
上に挙げた「特別の出来事」に該当しない場合でも労災補償が認められるケースもありますので,業務上の出来事を原因として精神障害に罹患された方は,一度弁護士にご相談ください。

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