1 はじめに
労働災害によるケガを負ったり、精神障害を発症した場合には治療を受けることになります。しかし、治療を継続したとしても、療養を継続しても、症状が改善しない場合(症状固定)には、後遺症が残ってしまったということになります。
後遺症が残った場合には、その後遺症に対して、後遺障害等級認定申請を行うことにより、給付金が支給される場合があります。
症状固定となった後、労働基準監督署に連絡すると後遺障害を判断するための専用の診断書を手に入れることができます。
そして、その診断書を医師に渡し、医師に内容を記載してもらいます。その後、後遺障害診断書やレントゲン画像・MRI画像等の必要書類を労働基準監督署に持参すると後遺障害等級認定申請が開始されます。
後遺症の内容によっては、後日、労働基準監督署の地方労災医員という医師の診察があります。
多くの場合は、後遺障害等級認定申請が開始されてから2か月~3か月程度で後遺障害等級の認定の有無、その等級が決まります。
そして、決まった後遺障害等級に応じて、給付金が支給されますので、給付金の種類や金額についてご説明します。
2 後遺障害等級第1級から第7級まで
後遺障害等級は1級から14級まであり、第1級が一番重篤な後遺障害となります。
また、後遺障害等級1級から7級までと8級から14級とでは大きな差があります。その差とは、障害年金の給付を得ることができるか否かです。
1級から7級が認定されると2か月に1回年金として給付が継続していきますが、8級から14級の場合には給付金は1回のみです。
給付金の種類と金額
等級 |
障害等級障害年金 (定期金/年額) |
障害特別支給年金 (定期金/年額) |
障害特別支給一時金 (1回のみ) |
第1級 |
給付基礎日額の313日分 |
算定基礎日額の313日分 |
342万円 |
第2級 |
給付基礎日額の277日分 |
算定基礎日額の277日分 |
320万円 |
第3級 |
給付基礎日額の245日分 |
算定基礎日額の245日分 |
300万円 |
第4級 |
給付基礎日額の213日分 |
算定基礎日額の213日分 |
264万円 |
第5級 |
給付基礎日額の184日分 |
算定基礎日額の184日分 |
225万円 |
第6級 |
給付基礎日額の156日分 |
算定基礎日額の156日分 |
192万円 |
第7級 |
給付基礎日額の131日分 |
算定基礎日額の131日分 |
159万円 |
第1級から第7級の障害等級
後遺障害等級:第1級
1号 |
両眼が失明したもの |
2号 |
そしゃく及び言語の機能を廃したもの |
3号 |
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの |
4号 |
胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの |
5号 |
削除 |
6号 |
両上肢をひじ関節以上で失ったもの |
7号 |
両上肢の用を全廃したもの |
8号 |
両下肢をひざ関節以上で失ったもの |
9号 |
両下肢の用を全廃したもの |
後遺障害等級:第2級
1号 |
1眼が失明し、他眼の視力が0.02以下になったもの |
2号 |
両目の視力が0.02以下になったもの |
2号-2 |
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの |
2号-3 |
胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常時に介護を要するもの |
3号 |
両上肢を手関節以上で失ったもの |
4号 |
両下肢を足関節以上で失ったもの |
後遺障害等級:第3級
1号 |
1眼が失明し、他眼の視力が0.06以下になったもの |
2号 |
そしゃく又は言語の機能を廃したもの |
3号 |
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの |
4号 |
胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの |
5号 |
両手の手指の全部を失ったもの |
後遺障害等級:第4級
1号 |
両眼の視力が0.06以下になったもの |
2号 |
そしゃく及び言語の機能を廃したもの |
3号 |
両耳の聴力を全く失ったもの |
4号 |
1上肢をひじ関節以上で失ったもの |
5号 |
1下肢をひざ関節以上で失ったもの |
6号 |
両手の手指の全部の用を廃したもの |
7号 |
両足をリスフラン関節以上で失ったもの |
後遺障害等級:第5級
1号 |
1眼が失明し、他眼の視力が0.1以下になったもの |
1号-2 |
神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し特に軽易な労務以外の労務に服することができない |
1号-3 |
胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの |
2号 |
1上肢を手関節以上で失ったもの |
3号 |
1下肢を足関節以上で失ったもの |
4号 |
1上肢の用を全廃したもの |
5号 |
1下肢の用を全廃したもの |
6号 |
両足の足指の全部を失ったもの |
後遺障害等級:第6級
1号 |
両目の視力が0.1以下になったもの |
2号 |
そしゃく又は言語の機能に著しい障害を残すもの |
3号 |
両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することが できない程度になったもの |
3号-2 |
1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの |
4号 |
せき柱に著しい変形又は運動障害を残すもの |
5号 |
1上肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの |
6号 |
1下肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの |
7号 |
1手の5の手指又は母指を含み4の手指を失ったもの |
後遺障害等級:第7級
1号 |
1眼が失明し、他眼の視力が0.6以下になったもの |
2号 |
両耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの |
2号-2 |
1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの |
3号 |
神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの |
4号 |
削除 |
5号 |
胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの |
6号 |
1手の母指を含み3の手指又は母子以外の4の手指を失ったもの |
7号 |
1手の5の手指又は母子を含み4の手指の用を廃したもの |
8号 |
1足をリスフラン関節以上で失ったもの |
9号 |
1上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの |
10号 |
1下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの |
11号 |
両足の足指の全部の用を廃したもの |
12号 |
外貌に著しい醜状を残すもの |
13号 |
両側のこう丸を失ったもの |
2後遺障害等級第8級から第14級まで
給付金の種類と金額
等級 |
障害等級障害一時金 (1回のみ) |
障害特別支給一時金 (1回のみ) |
障害特別支給一時金 (1回のみ) |
第8級 |
給付基礎日額の503日分 |
算定基礎日額の503日分 |
65万円 |
第9級 |
給付基礎日額の391日分 |
算定基礎日額の391日分 |
50万円 |
第10級 |
給付基礎日額の302日分 |
算定基礎日額の302日分 |
39万円 |
第11級 |
給付基礎日額の233日分 |
算定基礎日額の233日分 |
29万円 |
第12級 |
給付基礎日額の156日分 |
算定基礎日額の156日分 |
20万円 |
第13級 |
給付基礎日額の101日分 |
算定基礎日額の101日分 |
14万円 |
第14級 |
給付基礎日額の56日分 |
算定基礎日額の56日分 |
8万円 |
第8級から第14級の障害等級
後遺障害等級:第8級
1号 |
1眼が失明し、又は1眼の視力が0.02以下になったもの |
2号 |
せき柱に運動障害を残すもの |
3号 |
1手の母指を含み2の手指又は母指以外の3の手指を失ったもの |
4号 |
1手の母指を含み3の手指又は母指以外の4の手指の用を廃したもの |
5号 |
1下肢を5センチメートル以上短縮したもの |
6号 |
1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの |
7号 |
1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの |
8号 |
1上肢に偽関節を残すもの |
9号 |
1下肢に偽関節を残すもの |
10号 |
1足の足指の全部を失ったもの |
後遺障害等級:第9級
1号 |
両目の視力が0.6以下になったもの |
2号 |
1眼の視力が0.06以下になったもの |
3号 |
両眼に半盲症、視野狭さく又は視野変状を残すもの |
4号 |
両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの |
5号 |
鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの |
6号 |
そしゃく及び言語の機能に障害を残すもの |
6号-2 |
両目の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの |
6号-3 |
1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの |
7号 |
1耳の聴力を全く失ったもの |
7号-2 |
神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの |
7号-3 |
胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの |
8号 |
1手の母指又は母指以外の2の手指を失ったもの |
9号 |
1手の母指を含み2の手指又母指以外の3の手指の用を廃したもの |
10号 |
1足の第1の足指を含み2以上の足指を失ったもの |
11号 |
1足の足指の全部の用を廃したもの |
11号-2 |
外貌に相当程度の醜状を残すもの/th> |
12号 |
生殖器に著しい障害を残すもの
|
後遺障害等級:第10級
1号 |
1眼の視力が0.1以下になったもの |
1号-2 |
正面視で複視を残すもの |
2号 |
そしゃく又は言語の機能に障害を残すもの |
3号 |
14歯以上に対し歯科補てつを加えたもの |
3号-2 |
両耳の視力が1メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になったもの |
4号 |
1耳の聴力が耳を接しなければ大声を解することができない程度になったもの |
5号 |
削除 |
6号 |
1手の母指又は母子以外の2の手指の用を廃したもの |
7号 |
1下肢を3センチメートル以上短縮したもの |
8号 |
1足の第1の足指又は他の4の足指を失ったもの |
9号 |
1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの |
10号 |
1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの |
後遺障害等級:第11級
1号 |
両眼の眼球に著しい調整機能障害又は運動障害を残すもの |
2号 |
両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの |
3号 |
1眼のまぶたに著しい欠損を残すもの |
3号-2 |
10歯以上に対し歯科補てつを加えたもの |
3号-3 |
両耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの |
4号 |
1耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの |
5号 |
せき柱に変形を残すもの |
6号 |
1手の示指、中指又は薬指を失ったもの |
7号 |
削除 |
8号 |
1足の第1の足指を含み2以上の足指の用を廃したもの |
9号 |
胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの |
後遺障害等級:第12級
1号 |
1眼の眼球に著しい調整機能障害又は運動障害を残すもの |
2号 |
1眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの |
3号 |
7歯以上に対し歯科補てつを加えたもの |
4号 |
1耳の耳かくの大部分を欠損したもの |
5号 |
鎖骨、胸骨、ろく骨、肩こう骨、又は骨盤骨に著しい変形を残すもの |
6号 |
1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの |
7号 |
1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの |
8号 |
長菅骨に変形を残すもの |
8号-2 |
1手の小指を失ったもの |
9号 |
1手の示指、中指又は環指の用を廃したもの |
10号 |
1足の第2の足指を失ったもの、第2の足指を含み2の足指を失ったもの又は第3の足指以下の3の足指を失ったもの |
11号 |
1足の第1の足指又は他の4の足指の用を廃したもの |
12号 |
局部にがん固な神経症状を残すもの |
13号 |
削除 |
14号 |
外貌に醜状を残すもの |
後遺障害等級:第13級
1号 |
1眼の視力が0.6以下になったもの |
2号 |
1眼に半盲症、視野狭さく又は視野変状を残すもの |
2号-2 |
正面視以外で複視を残すもの |
3号 |
両眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの |
3号-2 |
5歯以上に対し歯科補てつを加えたもの |
3号-3 |
胸腹部臓器の機能に障害を残すもの |
4号 |
1手の小指の用を廃したもの |
5号 |
1手の母指の指骨の一部を失ったもの |
6号 |
削除 |
7号 |
削除 |
8号 |
1下肢を1センチメートル以上短縮したもの |
9号 |
1足の第3の足指以下の1又は2の足指を失ったもの |
10号 |
1足の第2の足指の用を廃したもの、第2の足指を含み2の足指の用を廃したもの又は第3の足指以下の3の足指の用を廃したもの |
後遺障害等級:第14級
1号 |
1眼のまぶたの一部に欠損を残し、又はまつげはげを残すもの |
2号 |
3歯以上に対し歯科補てつを加えたもの |
2号-2 |
1耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの |
3号 |
上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの |
4号 |
下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの |
5号 |
削除 |
6号 |
1手の母指以外の手指の指骨の一部を失ったもの |
7号 |
1手の母指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの |
8号 |
1足の第3の足指以下の1又は2の足指の用を廃したもの |
9号 |
局部に神経症状を残すもの |
3 自分の後遺障害等級はどのような内容か、等級は何級か?
後遺障害等級が決まると労働基準監督署から後遺障害等級のお知らせのハガキが自宅に届きます。
そのハガキを見れば、支給額や等級が分かります。
少しわかりづらいですが、赤枠の部分が後遺障害等級(等級・号)となります。
また、このハガキだけでは、詳しい後遺障害の審査内容や判断内容はわかりませんが、個人情報開示請求という手続により障害認定調査復命書を取り寄せることによって、審査内容や判断内容の詳細を知ることができます。
4 認定された等級等級に不服がある場合
認定された後遺障害等級に不服がある場合には審査請求という不服申立手続があります。
障害認定調査復命書を取り寄せた結果、審査内容や判断内容に異議がある場合には、不服申立手続を取ることになります。
後遺障害等級を判断する際には、労働基準監督署の医師の意見を確認する場合もありますが、確認せずに主治医の意見のみで判断する場合がありますので、主治医が協力的でない場合には等級の低い後遺障害が認定されることもあります。また後遺症の内容を見落とし、十分な後遺障害の審査ができていない場合もあります。
ご自身の認定された後遺障害等級に不服がある場合には、審査請求をご検討ください。
5 さいごに
後遺障害等級が認定されると給付金が支給されますが、負傷の状況によっては十分な補償とはいえない場合も多くあります。また、労災保険からは慰謝料は支払われません。
そのような場合には、不足分を勤務先に慰謝料等を請求していく方法があります。全ての場合において勤務先に請求できるわけではありませんが、勤務先に安全配慮義務違反がある場合には会社に請求することができます。
後遺障害等級に不服がある方や勤務先に賠償請求をしたいとお考えの方は当事務所にご連絡ください。
みなさまのバディ(相棒)としてお力になります。