機械等の点検、修理、調整中の労災事故 ~労働安全衛生規則107条違反について~
機械等の点検、修理、調整中に労働者が機械等に巻き込まれて発生する労災事故が多く発生しています。
このようなケースの使用者の責任について、以下のように、労働安全衛生規則に明確な規定があります。
労働安全衛生規則107条
「 事業者は、機械(刃部を除く。)の掃除、給油、検査、修理又は調整の作業を行う場合において、労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、機械の運転を停止しなければならない。ただし、機械の運転中に作業を行わなければならない場合において、危険な箇所に覆いを設ける等の措置を講じたときは、この限りでない。 」
上記規定は、機械等の点検、修理、調整中といった作業中に、労働者の身体の一部が動力部分に巻き込まれて、はさまれたり、切断されるといった危険が類型的に認められることから、これらの作業中には機械自体の運転の停止を義務付けたものです。
したがって、機械等の点検、修理、調整中に身体の一部が挟まれたりして、怪我を負った場合には、原則として、機械の運転を停止させなかった事業者(使用者)に損害賠償責任があるといえます。
もっとも、労働者が安全よりも作業効率を優先させて、事業者から命令に従わず、あえて機械の運転を停止させずに作業を行うこともあり、このような場合には、労働者の責任は大きいといえます。
このような場合には、労働者の不安全行動が常習化していたか、常習化していた場合には使用者においてもこれを是認していたといえるかが争点となりますが、大きく過失相殺されてしまうことになります。