建設現場の災害と元請の責任について
建設現場は、多くの重機を使用して、元請、下請及び孫請などの複数の労働者が混在して同時に作業を行うことから、労働災害がよく発生します。
そのため建設現場では、工事の元請事業者は「特定元方事業者」と呼ばれ、当該工事現場で作業を行う労働者全体を、作業中の危険から守るための施策の実施義務が課せられています(労働安全衛生法15条)。
具体的には、①関係請負人すべてが参加する協議組織を設置し、定期的に会議を実施する義務、②関係請負人間の連絡及び調整を行う義務、③毎作業日に少なくとも1回は作業場所を巡視する義務(労働安全衛生規則637条)、④関係請負人が行う労働安全衛生教育に対する指導及び援助を行う義務(労働安全衛生規則638条)などです。
これらの特定元方事業者としての責任を怠ったために、労働災害を発生させてしまったといえるような場合には、元請事業者は、下請事業者の労働者に対して、安全配慮義務違反に基づき損害賠償を行わないいけません。
本来、元請は下請事業者の労働者を直接指揮命令する立場にはないですが、複数の関係請負人の労働者が混在し、同時に作業が行われる建設現場においては、現場の指揮命令を行う事業者が必要です。
労働安全衛生法は、その責任を工事の元請事業者に負わせているのです。
したがって、もし、建設現場で労働災害に被災し、損害賠償請求を行う場合には、当該建設工事の元請の安全管理状態に不備がなかったかを調査し、元請の損害賠償責任も検討すべきといえます。