使用者に課せられた安全衛生教育の義務 ~労働安全衛生法35条~
労働災害事故は若年の労働者や就労開始後間もない労働者に多く発生する傾向があります。
これは、使用者が、労働者に対し、業務に使用する機械等について、その危険性、有害性及び取扱方法を十分に説明しないで就労させていることが原因であることが多いです。
この点、労働者に対する機械の危険性や取扱方法の説明義務については、以下のように、労働安全衛生法に明確な規定があります。
労働安全衛生法35条
『事業者は、労働者を雇い入れ、又は労働者の作業内容を変更したときは、当該労働者に対し、遅滞なく、次の事項のうち当該労働者が従事する業務に関する安全又は衛生のため必要な事項について、教育を行なわなければならない。ただし、令第二条第三号 に掲げる業種の事業場の労働者については、第一号から第四号までの事項についての教育を省略することができる。
一 機械等、原材料等の危険性又は有害性及びこれらの取扱い方法に関すること。
(以下、省略) 』
上記規定は、業務による事故を防ぐために、使用者に対し、労働者の雇入れ時、または、配置転換時に、機械等の業務手順や取扱方法について、教育を行うことを課しています。
そして、使用者に対する安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求についても、安全教育の実施の有無は重要な要素となります。
特に、労働者に対して、あらかじめ、機械や作業の危険性を周知・教育されていれば起こらないような種類の労働災害である場合には、教育を怠っていた使用者にこそ重大な過失があり、十分な教育を施されていなかった労働者には過失が存在しないと評価すべきといえます。