労災申請から損害賠償請求まで、労災問題に強い弁護士が代行致します。

労災弁護士コラム

労働災害で休業中に会社は労働者を解雇できるのか

投稿日:2018年4月13日 更新日:

労災事故に遭った従業員は,療養のため,一定期間会社を休むことを余儀なくされます。怪我の症状によっては治療・療養が長引き,休業が長期化することもあります。このような場合には,給料の代わりに休業補償給付が労災保険により支払われますので、会社に金銭的負担はないものの突如会社から解雇を言い渡されることもあります。
従業員としては業務中に事故に遭ったにもかかわらず、会社から切り捨てられることは理不尽に思うはずです。
そこで,会社が労災に被災して療養中の従業員を解雇できるのか,できるとしてどのような条件のもとで可能なのかということが問題となります。

目次(もくじ)

1 法律上の解雇制限

この問題について,法律上,会社は,従業員が業務上の怪我等により療養している期間とその後30日間は解雇をしてはならないという制限を設けています(労基法19条1項本文)。このことから,原則として,従業員が療養による休業期間中や療養が終わって30日間は解雇できないことになります。

ところが,この規定には例外があります。その例外とは,会社の費用負担において療養している従業員が,療養開始後3年を経過しても治らない場合において,使用者が平均賃金の1200日分の打切補償をした場合です(労基法19条1項ただし書,81条)つまり,会社側は,療養の補償をしていることを前提として,3年間療養を継続しても治らない従業員に対しては,打切補償をとして金員を支給することにより解雇することができます(打切補償によりそれ以降の療養補償も義務を免れます。)。

労働基準法第19条(解雇制限)
1 使用者は、労働者が業務上負傷し、、、、療養のために休業する期間及びその後三十日間、、、は、解雇してはならない。ただし、使用者が、 第81条の規定によつて打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合においては、この限りでない。
2 前項但書後段の場合においては、その事由について行政官庁の認定を受けなければならない。

 

2 療養費用の会社負担の要否と解雇

会社が打切補償を行って解雇する場合,会社が被災労働者の療養費用を補償していることを要件としていますが,この療養の補償は,労災保険による療養補償給付でも足りるとされています。
この点が争われた事案において,最高裁は,労基法において使用者の義務とされている災害補償は,これに代わるものとして労災保険法に基づく保険給付が行われている場合にはそれによって実質的に行われているものといえるので,使用者自らの負担により災害補償が行われている場合とこれに代わるものとしての労災保険に基づく保険給付が行われている場合とで,打切補償による解雇等の規定の適用の有無につき取扱いを異にすべきものとはいい難いと判断しています(最判平成27年6月8日)。

3 通勤災害の場合と解雇制限

会社への出勤や会社からの退勤時に事故に遭った場合にも通勤災害として労災保険を使用することができます。
しかし、労災保険が適用されるものの、通勤災害は業務上の災害とは別のものです。
そのため、「労働者が業務上負傷し」に該当しないため、解雇制限はないと考えられています。
つまり、通勤災害に遭い療養中であっても会社は解雇ができることになります。

4 さいごに

労災に遭われると元通りの体になるのか、これまで通り働けるのか不安に思われる毎日が続きますが、そのような中会社から解雇を通告されるとさらなる精神的ショックとなります。
落ち込んでいる中、自主退職として退職届を提出してしまったという方もいらっしゃいます。
労災に遭われた場合には不当な取り扱いをされないよう法律が守ってくれますので、労災や労災中の解雇にお困りの方は当事務所にご連絡ください。
あなたのバディ(相棒)として、お力になります。

-労災弁護士コラム

Copyright© 大阪労働災害相談サイト , 2024 AllRights Reserved.