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労災弁護士コラム

工場での労働災害(労災)と賠償金請求について

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はじめに

たくさんの工業用機械が稼働する工場では頻繁に労働災害(労災)が起こっています。
そして、工場での労災事故は機械作業などが原因となって起こることが多いため、重篤な結果を伴うことが非常に多いです。
労働者災害補償保険法(労災保険といいます)により、休業と後遺症に対して保険金が給付されますが、それは損害の一部に過ぎません。
また、労災事故に対する慰謝料は労災保険では一切補償されません
したがって、労災事故に対する適切な損害の賠償は労災事故を引き起こした責任を有する会社に請求していくことになります。
以下では、労災事故のうち、工場で良く発生する類型の労災事故その賠償金について、実際の経験も踏まえてご説明します。

機械調整作業中の事故

⑴ 機械調整作業中の事故が多い理由

工場機械が原因で発生する事故の一つに、機械の点検・修理・調整中の事故があります。
例えば、コンベアが停止したので、原因を確認するために点検を行っていると突然動き出して、指がコンベアに接触して負傷するなどの事故がこれにあたります。
工場機械に何らかのトラブルが生じた場合に、点検や修理・修理後の調整作業を行いますが、これらの作業は機械が正常に動作している時の作業手順とは異なりますので、機械が意図しない動作をすることが良くあります。
このような機械の点検・修理・調整中に体の一部が挟まれたりする事故は頻繁に起こっています。

⑵ 会社の責任の検討

労働安全衛生規則107条1項に以下の規定があります。

「事業者は、機械(刃部を除く。)の掃除、給油、検査、修理又は調整の作業を行う場合において、労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、機械の運転を停止しなければならない。ただし、機械の運転中に作業を行わなければならない場合において、危険な箇所に覆いを設ける等の措置を講じたときは、この限りではない。」

この規定によれば機械調整作業中で、危険が及ぶ恐れがある場合には機械の運転そのものを停止させるか、覆いなどで危険個所を物理的に遮断しなければなりません。
したがって、機械調整中(機械の掃除、給与、健さ、修理も含む)に機械を停止していないことは労働安全衛生規則違反となり、会社の責任が認められます。

⑶ 過去に扱った機械調整作業中の労災事故の賠償金

当事務所で扱った機械作業中の労災事故として、スクリュウコンベアの調整中に突然動き出したコンベアに親指等が巻き込まれて,切断されるという重大事故がありました(後遺障害9級に該当)。
この事故に関する賠償金請求として、当事務所は上記労働安全衛生規則107条を指摘し、掃除等の調整時に行うべき機械操作を会社側が怠ったことを主張した結果、約2400万円の賠償が認められました。

接触・挟まれ・巻き込まれ事故

⑴ 接触・挟まれ・巻き込まれ事故が多い理由

モルダー機や旋盤・自動切断機(ソー)などの工場の機械は、運転中に刃物部分などの危険源が材料の加工などのために可動します。
その可動する危険源に接触することによる工場災害は非常に多く、また、非常に重篤な結果となることが多いです。
例えば、NC旋盤等で材料を加工中に、機械付近に置かれた加工済材料の整頓をしようとして、誤って刃物部分に接触してしまうなどの事故です。
このような危険源に接触・挟まれ・巻き込まれる事故は工場災害の典型的な事故といえます。

⑵ 会社の責任の検討

稼働中の工作機械の接触・挟まれ・巻き込まれ等の類型に関する労働災害防止対策として、労働安全衛生規則では,以下で引用するように,覆い、囲い、接触予防装置等が規定されています。

第百十三条 (突出した加工覆(おお)い等)
事業者は、立旋盤、タレツト旋盤等から突出して回転している加工物が労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、覆(おお)い、囲い等を設けなければならない。
第百十四条 (帯のこ盤の歯等の覆(おお)い等)
事業者は、帯のこ盤(木材加工用帯のこ盤を除く。)の歯の切断に必要な部分以外の部分及びのこ車には、覆(おお)い又は囲いを設けなければならない。
第百十五条 (丸のこ盤の歯の接触予防装置)
事業者は、丸のこ盤(木材加工用丸のこ盤を除く。)には、歯の接触予防装置を設けなければならない。
第百四十七条(射出成形機等による危険の防止)
事業者は、射出成形機、鋳型造形機、型打ち機等(第百三十条の九及び本章第四節の機械を除く。)に労働者が身体の一部を挟まれるおそれのあるときは、戸、両手操作式による起動装置その他の安全装置を設けなければならない。
2 前項の戸は、閉じなければ機械が作動しない構造のものでなければならない。

したがって,工作機械の稼働中に,刃部などの危険源が労働者に接触したり・機械に挟まれたりする類型の労働災害は,機械の刃部が剥き出しであることや安全装置を備え付けていなかったこと自体に法令違反が存在する場合が多く,会社にも少なからず責任が認められます。

⑶ 過去に扱った接触・挟まれ・巻き込まれ労災事故の賠償金

当事務所所属弁護士が過去に扱った工作機械の接触・挟まれ・巻き込まれ労災事故として,射出成型機に挟まれ,指を切断する類型の事件がありました。
同事件に関する賠償金請求では,労働安全衛生規則147条違反を根拠に会社と会社の代表取締役へ損害賠償請求を行い,最終的に約1500万円の賠償金を得ることができました。

安全教育不十分が原因となる事故

⑴ 安全教育不十分による事故が多い理由

上記の調整作業中や接触等の労災事故に加えて、安全教育が不十分であったことが原因となる労災事故事故の類型も非常に多いです。
このような類型の労災事故は新人工員や派遣労働者である場合が特に多いです。
新人工員や派遣労働者は、当然ですが機械作業に熟知していないため、突然、作業を命じられ、十分な説明もないまま機械を動かし、労災事故に被災してしまうのです。

⑵ 会社の責任の検討

労働者に対する安全教育として,労働安全衛生法59条及び同規則35条では,以下の規定が設けられています。

労働安全衛生法第五十九条 (安全衛生教育)
事業者は、労働者を雇い入れたときは、当該労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、その従事する業務に関する安全又は衛生のための教育を行なわなければならない。
2 前項の規定は、労働者の作業内容を変更したときについて準用する。
労働安全衛生規則第三十五条 (雇入れ時等の教育)
事業者は、労働者を雇い入れ、又は労働者の作業内容を変更したときは、当該労働者に対し、遅滞なく、次の事項のうち当該労働者が従事する業務に関する安全又は衛生のため必要な事項について、教育を行なわなければならない。ただし、令第二条第三号に掲げる業種の事業場の労働者については、
第一号から第四号までの事項についての教育を省略することができる。
一 機械等、原材料等の危険性又は有害性及びこれらの取扱い方法に関すること。
二 安全装置、有害物抑制装置又は保護具の性能及びこれらの取扱い方法に関すること。
三 作業手順に関すること。
四 作業開始時の点検に関すること。
五 当該業務に関して発生するおそれのある疾病の原因及び予防に関すること。
六 整理、整頓(とん)及び清潔の保持に関すること。
七 事故時等における応急措置及び退避に関すること。
八 前各号に掲げるもののほか、当該業務に関する安全又は衛生のために必要な事項

上記の規定もあることから,危険が伴う作業に関して,十分な安全教育ができていない場合には事業者に責任が認められることになります。

⑶ 過去に扱った安全教育不十分が原因となる労災事故の賠償金

当事務所所属弁護士が過去に扱った安全教育不十分が原因となった労災事故として,カゴ台車(ロールボックスパレット)で材料運搬中にカゴ台車ごと転倒して下敷きになり,腰骨を骨折した類型の事件がありました。
同事件に関する賠償金請求で,カゴ台車の転倒事故は非常に多いこと,及び,それにもかかわらずカゴ台車の扱い方に関する教育が一切行われていなかったことを追及しました。その結果,事業者から約1000万円の賠償金を得ることができました。

最後に

以上でご説明したとおり,工場で起こる労働災害にはさまざまなケースがあります。
しかし,労働安全衛生法及び同規則は,さまざまなケースを想定し,非常に多くの規定を設けて,安全対策義務を事業者に課しています。
もし、工場勤務で労災事故に被災し、会社に損害賠償請求をご検討の場合には、専門家へ損害賠償請求可能かどうかを確認されることをおススメします。

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