労働災害と労働者の過失~過失相殺について~
労働災害が発生し、その責任を使用者へ請求していくと、使用者からは「労働者の不注意により事故が発生したのだから損害賠償額は減額されるべきである」といった主張がされることが多いです。
特に、高所からの転落事故や機械の誤操作に基づく事故などの場合、労働者の不注意と取れる事情が存在することもよくあります。
このような労働者の不注意に基づく損害賠償の減額のことを過失相殺といいます。
労働災害に基づく損害賠償の裁判において、過失相殺は広く認められており、過失相殺が行われて、請求した損害額が減額されることは珍しいことではありません。
もっとも、安易に使用者の主張を受け入れて、過失相殺に応じるべきではありません。
多くの労災事故は、そもそも使用者の安全配慮義務違反があるところに、労働者の不注意が加わって起こることが圧倒的に多いからです。
したがって、過失相殺に応じるとしても、当該労災事故発生の責任割合をしっかりと見極めるべきです。
そして,過失割合の考慮にあっては、労働安全衛生法26条が「労働者は、事業者が第二十条から第二十五条まで前条第一項の規定に基づき講ずる措置に応じて、必要な事項を守らなければならない」と規定し、安全管理措置については一次的には使用者において行うことを前提としていることにも注目すべきといえます。
また、仮に労働者の不注意が大きかったとしても、当該労働者が新人等であったため、作業経験が浅かったなどの事情が認められるような場合には、過失相殺による減額幅も小さくなります。